昔の下らん恋愛物の
三文小説にあるような
よくある台詞を吐き捨てて
間抜けな男が去って行く
人の店で下らんこと言ってんじゃねぇと
思ってはいれど、口には出さず
一人 マスター 皿を拭く。

狭い店には少しだけ
長いカウンターと幾つかのテーブル
色々な物語が集まり
幸せが咲いていく
顔ではニコニコしているつもり
けれど嫉妬はするんだよ
一人 マスター 皿を拭く。

従業員は一人だけ
痩せこけた色白の小男
ホントは女が欲しかった
たいした儲けも無い店で
お前なんか雇わなけりゃ良かった
口には出さず、心の奥を
一人 マスター 皿を拭く。

どんなに下らない人間にでも
生きる権利は有るはずだ。
だから マスター 皿を拭く。
今日も マスター 皿を拭く。
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