やがて忘れてしまうことなら
覚えることに意味はあるのだろうか?
得られるものが汚れていても
求める必要はあるのだろうか?
終わらない問答の続きは後にして
今はただ 進むしかないのか?

掌に握り締めた栄光は
一瞬にして崩壊した
背中の翼は
何時の間にか 黒くなる
時間が欲しい
停滞した時間が
揺らがない水面が
あり得ないことばかりが
大切な気がしていた

空間を満たすもの
判断する必要はなかった
理解不能な現実に恐怖していたとしても
自分の言葉の不確かさだけは
確かだったというのに

泪を流そう
枯れてしまうまで
声は大きな方が良い
どこまで届くか分からないから
耳は塞いでおいた方が良い
自分に嫌気がさすから
頭を抱え 血を流し
崩れてしまうしかないのだから

死に行く途中ならば
それは仕方のないこと
認めるしかないのなら
あえて否定してしまう
そうして生きることには
どんな意味があろう?

全てを受け入れ
破裂してしまおう
どうせここには何も無い
弾けた破片は
夜空を満たすだろうから

言えなかった言葉に
感謝を送ろう
言う必要のなかった言葉なのだから
それは誰が決めたのだろうか?

いつか見た景色
錯覚でなくても
同じことを繰り返すしかないのだから
気にすることはないだろう
繰り返される苦痛よりは
ずっとマシ

この夜は何時終わる?
朝が来ないとしても
この雨は何時上がる?
雲は晴れないとしても
時間の終焉は何時来る?
歓迎の準備は済んでいるというのに

認めてしまえれば楽になれる
それすらも嘘ならば
何を信じれば救われる?
救われる資格は持っている?
救われるのに 資格が必要なのか?
全てに意味が必要なのか?
誰が判断するのか?
それは大抵間違っているとしても

遠くに見える光は
やがて近付いてくるだろう
そして 通り過ぎてしまうだろう
後ろを振り返っても
在るのは 闇
そこに行くことが
一番難しいとしても
貴方はそこへ辿り着くだろう
これは呪いだ

夏でも寒い日はある
冬でも暑い日はある
秋だからといって葉が落ちるとは限らない
春だからといって雪が溶けるとは限らない
死ぬからといって生きているとは限らない
刃が貴方を傷付けるとは限らない
癒しが貴方を後押しするとは限らない

部屋の隅に誰かがいる
こっちを睨み 蔑み
叱咤している
「もっと努力しろ」と
そう言っている
苛立ちが募り 何かが変ることはない
急かされても出来ないこともある
我慢出来ないこともある
それはただの言い訳でしかなかった

月が昇る
あの山の向こうに
大きく赤い月が昇る
やがて沈むとしても
それは美しい
沈んだとしても
やがて また
昇るだろう

信じることは時に快感となる
エゴでしかないとしても
待つことは良いことじゃない
何が待っているとしても

翼を広げ羽ばたく
やがて落ちるとしても
一瞬の充実が命と引き換えになるとしても
何処にも行けないとしても

そのままで良いなんて狂言だ
そのままでいられる筈が無いのだから
そのままで自分を保つことなど出来はしないのだから
そして
歪みを認めずに崩壊していく

闇の中
光を睨み
孤独を愛し
五感を断ち
手首に刃を押し当て
そして……
inserted by FC2 system