ラズベリーの香りがする
この扉の向こうから
鍵穴の無い扉を開けるには
何が必要なのだろうか?

僕が言えなかった言葉を
容易く口に出来た人が
偉くなるというのなら
僕は偉くなんてなりたくない
言葉の価値を間違えたくはない

不幸だって構わない
自由はどこにだってあるじゃないか?
たとえ棺の中にだって
最後の一つの自由がある

毛布を剥ぎ取られた夜のような
体が一回り小さくなったような
身を削がれたような
儚く散る快楽
失われるものこそ美しく見える

力なく立つのなら
四肢を広げて寝転んでしまいたい
陽光を一身に受けて
そして朽ちてしまいたい

時の流れの短さに
恐怖を感じるのはただの感傷なのか?
溢れる疑問だけが加速して
やがて光と衝突する

刃のような強さはいらない
痛みを身に映して輝くような強さは
欲しいのは、毛布
包み込んでくれるような暖かい強さ

でも、それは簡単に買うことが出来る。
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