空の色が青く見える


愛してる なんて言葉で
簡単に片付けられるほど
この気持ちは 軽くない
言葉にしても 届かないから
私は
貴方の掌を握る

そろそろ向日葵の種をまこう
夏の日差しに顔を向け
川風に優しく揺れる
そんな
向日葵が好きだから

好きな人がいる 遠くに
僕は彼女の顔を思い浮かべようとして
声を思い出そうとして
温かさを思い出そうとして
止める
再会の時はそう遠くないから

グラスの中で音を立てる
冷たい氷を見つめて
ゆっくりと 瞳を閉じる
音だけが届く世界で
手探りで
香りの強いジンを飲む

思い出すのは 太陽の光
真っ黒に日焼けした 僕自身
汗の匂いすらも忘れてしまった
今の僕では きっと
届かない
じりじりする刻を求めてる

風を受けて 真っ直ぐに立つ
前髪をかき上げて 僕は
誰にも言えない想いと
言葉に出来ない記憶を
唄う
きっとこの詩は届かない

あの人の声を聴いて
私は自分を拡散させる
目の前に広がる草原と
頭上に広がる青い空と
あの人
意識せずに微笑む私

足の先から 髪の毛の先まで
震え出しそうな 恐怖
命を落としてしまうかもしれない
二度と戻れないかもしれない
死の恐怖
それでも僕は生きている

握り締めた指の隙間から
零れ落ちてしまうような 祈り
大好きという言葉が虚ろに響き
見つめる瞳のその向こうに
消える
愛しているなんて言えない

世の中に溢れる 愛の歌
悲しいニュースとどちらが多いだろう
僕らの耳に届くのは せめて
自然と頬が緩むような
そんな
素敵な物語が良いね

ふらふらして
くらくらして
まっすぐ歩けなくて
何を言っているのか分からない
そんな風に
酔っ払うこともたまには良いでしょ?

目を閉じている 彼女
僕はそれを確認して
彼女の肩を抱き寄せる
僕は目を閉じない
ただ
彼女の顔を見続けていたいから

両手を上げて 腰を落とし
すかさず足を伸ばして
僕は天を仰ぐ
倒れそうなまでに 体を伸ばして

光の下で僕は踊る

アクセルを踏む ステアを切る
ブレーキを踏みながら 僕は
タイミングを測る
一瞬の力加減が 僕の価値
失敗
間違えれば悲しいことになる

ぎしぎしと傷むのは
体だけじゃなくて 心も同じ
流れる汗がこんなにも
痛くて苦しいのは どうしてだろう
本当は
こんなことはしたくないのに

掌に汗をかくなんて 知らなかった
私の掌が届かない場所
今 あの人に触れられている
恐いのは 離れてしまうこと
そして
私達は無言で確かめ合う

指先の1ミリの動きで
妖艶に 艶やかに 美しく
私は世界を変える
誰の目にも届く

この踊りは心を握り締める

この機会を逃す手はない
僕は彼女の掌を横目で覗う
彼女の顔を見る 大丈夫だ
僕は彼女の掌を握る
あたたかい
伝わるのは気持ちだけじゃない

逃げられない事態も 避けられない事態も
私は乗り越えよう
その先にある 輝くものを
手に入れたいから
いつか
辿り着くことの出来る場所があるから

夢を見る人が いなくならないから
僕の住む場所はとても明るい
どんなに絶望にまみれた言葉が届いても
その人達は命を賭けて 自分を賭けて
頑張る
僕はその人達を見て嬉しく思う

ぱちんぱちんと 音を立てて
僕の一ヶ月が離れて行く
集中して 僕は
綺麗な半円を目指す
爪きり
僕にとってとても大切な儀式

旋律よりも 歌詞よりも
それよりもずっと 伝わるもの
貴方の歌声がここに届くから
僕は今日を生きている
声が
スピーカーから流れ出る

頭が痛くなる程に考えて
悩んで 悔やんで 苦しんで
それでも答えが出ないから
なりふり構わず 駆けずり回って
答えを
見つけた振りしてすっ転ぶ

この道を真っ直ぐに進めば
わき目も振らずに真っ直ぐ進めば
僕の生まれた場所に辿り着く
帰り道はいつも一本道で
直線
迷う方が難しいくらいに真っ直ぐ

どこに行ってもついてくる
何も言わずについてくる
何を考えているのか分からない
そもそも何も言ってくれない
黒いし
せめて顔くらいは見たいな 影さん

指先で触れる 指先だけで
一番敏感な場所だけで 触れる
掌ではいけない 微かなものを感じない
唇ではいけない 止まらなくなってしまう
指先が
彼の唇にゆっくりと触れる

愛の歌を歌うなんて とても簡単で
愛してるって言うのは もっと簡単で
キスをするのも 抱き合うのも
触れ合うのも 語り合うのも
簡単で
ただ 理解し合うことだけが難しい

壊れたオルゴールと 自分
破れたアルバムと 自分
動かない時計と 自分
汚れてしまった 純粋さを失ってしまった
自分
悪いのも自分だってことは分かっている

貴方は死を覚悟したことはありますか?
一瞬毎に命が磨り減って行くのを実感したことは?
人間の構造の限界を垣間見たことは?
社会の全てが敵に回ったことはありますか?
いえす
そう言う僕は何も知りません

アスファルトに寝転んで
風を感じながら見た 夏の空
子供の頃 空の青さが恐かった
包み込まれてしまうような 黒いほどの青
この頃
その青さが失われてはいませんか?

樹に手を触れて 驚く
彼らも脈動していることに 驚く
僕らと彼らの間に大きな差はない
小さな差ですら 意味はない
そこに
ただ立っている樹に僕は手で触れた

誰にも届かない歌を歌う
この星の隅っこで 僕は歌う
光の届かない場所で歌い
風の動かない場所で歌う
この声は
誰の耳にも届かない

自分を偽って 他人を手に入れる
手に入れた他人は他人ではなくなり
自分の枠の中にすっぽりと入る
でも 他人は他人のまま
やがて
離れる時が訪れるだろう

いつしか偽りと本心の境界は曖昧になり
他人であったことすらどうでも良くなる
離れる時が訪れるのを分かってはいても
共に過ごす時は偽りではなくて
得られる快楽は何よりも甘美で
例え別れが避けられぬものであったとしても
全てのものが手に入るだろう

涙を拭いて 空を見上げた日
ここから僕が離れなくてはならなかった日
たくさんの思い出と
たくさんの人々の笑顔と
さようなら
見上げたそらはあおかった


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