ラヴソングなんていらない


ラヴソングなんていらない。必要ない。
今の僕には、もう必要ない。
昔、僕が青い春に身を委ねていた頃、
ラヴソングは何よりも切なくて、痺れて、最高だった。
でも、今ではその輝いていたラヴソング達もどこかへ消えてしまった。
僕が今求めているのは、愛の歌じゃない。

会いたい人がいて、聞いて欲しい言葉があるけど、
全てが望み通りに行かないってことくらいは知っている。
それくらいのことは、学んだ。
僕だってもうガキじゃない。
好いた惚れたで片付けられるほど、純粋じゃない。

僕の愛した歌達は、確かに輝いていた。
その輝きは徐々に失われてしまった。
それは誰のせいでもなく、ただ僕だけのせいでしかない。
色々な物事が僕の背中に降り注いだから
僕はラヴソングを信じられなくなってしまった。
それだけだ。

昔輝いていた歌は、その場所を新しい歌に明渡し、
新しい世代のための、新しいラヴソングが歌われる。
僕はそれを「下らない」という。
何のことはない。ただ、良く分からないだけなのに。
良く分からないだけなのに、「下らない」と言う。
一番下らないのは、こんな僕だってことは分かっている。
全てを貫けるほどには若くないし、情熱だって薄れている。
新しいラヴソング達は、次の世代を作ってくれるだろう。
僕の想像もつかないような、素晴らしい時代を生み出してくれるだろう。

愛した気持ちだけを歌っても、誰にも伝わらないと思っていた。
でも、気持ちが伝われば共感することが出来る。
必要なのは、純粋無垢な心だった。
真っ白なシーツのような心なら、どんな物事でもすんなり受け入れることが出来る。
どんなラヴソングでも心を震わせることが出来る。
必要なのは、原点。僕の原点。
さあ、あの歌を思い出そう。

頭の中で繰り返される、ラヴソング。
僕はそれを下らないと思う。
自然と浮かぶ微笑みと、リズムを取っている指先で、
下らないと思う。
そうだろう?
だって、これはどんなに良い歌でも
僕の歌じゃないのだから。
借り物の歌詞、完成されたメロディ、誰の耳にも届くフレーズ。
羨ましい。
僕はラヴソングなんていらないと言う。
そして、自分のために、自分の歌を歌う。
ラヴソングじゃなくて、もっと違う。
僕のための、ラヴソングを歌う。

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