世界はその意志によってバランスが保たれている。
何が起こっても、それは既に過去のこと。
その事実が世界を安定させている。
不完全で不安定だから、復元力だけはある。
順応していると言っても良いだろう。
これは誰かがコントロールしている訳じゃない。
人の集団、つまり世界が存在した時からこうだった。
今更例を挙げるまでも無いだろう。
それが人間の、神に与えられた能力の最たるものだ。
無意識の内に、個人や集団の中で辻褄を合わせ、
矛盾を無くし、平安を得る。
それが一時の安らぎであっても。
もう一つ、神が人に与えた能力は
忘れることだ。
忘却力とでも言おうか。
良いことを忘れてしまうから、望みが加速する。
苦しかったことが忘れられるから、先に進める。
哀しかったことも、考えてもどうにもならないことも、
忘れる。
この能力があるから、社会は成り立つし
人間も狂わずにいられる。
必要なことを忘れてしまうのは反作用だが、
生きて行ければそれが最も重要なのだから
他はさして重要では無いのかもしれない。
つまり、神という絶対の存在でさえ
完璧な存在ではなかったのだろう。
我々を不完全なものとして創造したことが、立派な根拠だろう。
世界は思いの外、歪んでいて、それでも転がって行く。
止まらずに、未来へと向かって。
世界と人間は良く似ている。
歪み、狂気を内包したまま存在し続けているところが。
いっそ虚無に帰れれば完全なる安定が訪れるのか?
それはあり得ない。
全ての存在には理由があり、完全なものには存在意義が無くなるから。
人が存在していけるのは、不完全だからだ。
神が目に見えて存在しないのは、それが
完全から一歩だけ不完全に近付いた存在だから。
上手く言えないけど、
世界の歪みなんてものは
気にする程重要じゃないってことだ。