宇宙は膨張している。らしい。
破裂したエネルギーは拡散し、どこまでも広がるからだそうだ。
やがて広がるだけの力を失い、そしてどうなるのだろうか?
収束するのだろうか?停滞するのだろうか?
ならば、拡散している途中のエネルギーの中に築かれたこの宇宙は
いずれ無かったことになるのだろうか?
今手に握っているのは、ジッポー。
その揺らめく炎の中にも宇宙があったとしても、
何もおかしくはないんじゃないのか?
そして蓋を閉じれば、宇宙は消えてしまう。
人の気持ちも同じだ。
理由も分からず、ただ暴走し、加速して行く。
でも、弾けてしまえばそれで終わり。
残るのは大きな傷痕だけ。
その痛みに耐えられるはずもなく、
傷痕の存在自体を認識しない。
自分の宇宙を保つため、崩壊の危機をあえて無視する。
この宇宙がいずれ崩壊する時が来るのならば、
きっと誰もがそれを認めないのだろう。
それでも宇宙が崩壊してしまうというのなら、
また同じくらい大きな爆発を起こそうとするんじゃないのか?
人為的に起こされたビッグバンは宇宙を保つことが出来るのだろうか?
全てを巻き込み、弾けさせたとしても
その犠牲を取り戻すことなんて出来ないのに。
膨張している宇宙は
その端を垣間見ることを許してはくれない。
だから意識だけでその端を見る。
その外側を見る。
何が見えるのだろう?
絶対の虚無だろうか?光も闇も存在しない場所だろうか?
そこに意識が飛び込んだのならば、それは最早虚無とは言えない。
瞬間でも宇宙として成り立っているのではないだろうか?
だが、その宇宙はすぐに飲み込まれてしまう。
光よりも早く膨張を続ける宇宙によって。
人の気持ちはかき消されてしまう。
更に素晴らしい出来事によって。
思い出してももらえない記憶と
ただ消えるだけの宇宙と
同じものなのかもしれない。
誰も確かめることは出来ない。
見えないものしか信じられない。
見えないものですら信じられない。
自分すら信じられない。他人は当然信じられない。
今の存在も、この脳という肉塊の歌う戯言も
世界の秘密も日々の思い出も彼女の記憶も時間の経過も
未来も過去も現在も
人も獣も森も海も空も風も街も虫も
何もかもが
拡散し、やがて消えてゆくだろう。
それだけのために
日々を生きているのだから
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