懐かしいことを思い出した。
記憶というほど大層なものじゃなく、
イメージとして思い出した。
幼いころの一枚の絵。
今でははっきりと分からないけど、
大切なものだったはずだ。
こんなことが多すぎて、
時々自分の記憶力の稚拙さに嫌気がさす。
でも、はっきりと覚えていることは
恥を撒き散らして生きていたことだけ。
だったらそれを曖昧にして欲しかった。
古傷に触れて、傷口を開いてしまわぬように。
でも、唐突に思い出す古い記憶は、
僕の行動力と意志の全てを停止させる。
まるで爆弾が破裂したみたいだ。
昔のことを懐かしんでいる時には、
大抵この爆弾にやられる。
例えるなら、
久しぶりに歩いていた小道を
良い気分で散策していると、
不意に躓き、転んでしまったみたいに、
やるせない気分に駆られる。
でも、懐かしさにかまけて、
「これは昔のことだから」と
笑って済ませてしまえるのならまだマシだ。
時には暫く余韻よ引き摺るものもある。
溜め息も出ない程に。
きっと、同じ過ちを犯させないための
安全装置なのだろうが、
こっちはたまったモンじゃない。
何しろ、動きが取れなくなるのだから。
どうにして克服すれば良いのだろうか?
無かったことにする?
諦めて、次の似たような事態には同じ失敗をしないようにする?
何とか正当化できるように理屈をこねる?
どれでも良い。
その時の痛みを押さえ込めるなら。
どうせ痛みは死んでも消えないのだから。
だったら下手に忘れようとするよりも、
しっかりと覚えていた方がまだ良いのかもしれない。
自分の知らないところで取り返しの付かない事態になるよりは。
見えない場所の出血で、息絶えてしまうよりは。
全ての傷を把握して、痛みをコントロールする。
それが出来る強い人間ならばまだ見込みはあるが、
僕のように弱い人間はどうすればいいのだろうか?
傷が多すぎて、全てを目にした瞬間に
ショック死してしまうかもしれないのに。
痛い思いは出来るだけ避けたい。
今日を必死に生きるために。
方法が一つじゃないから、
誰かに教わっても使えない。
誰に教えることも出来ない。
自分で解決するしかないのだろうか?
一歩間違えれば
狂気の世界に足を踏み入れてしまうかもしれないというのに。
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