自分はいつも孤独だと感じていた。
それは人の集団の中に紛れ込んだ
獣のような状況。
だから俺は線を引いた。
閉鎖された部屋の窓越しに、
人の幸せを妬んでいた。
でも、あの人達も本当の部分では
孤独に押し潰されぬよう
必死になって耐えているのだ。
何と言う恐怖だろうか。
世界の本質は孤独に彩られ
虚偽ともいえる繁栄と喧騒によって支えられている。
最早否定の言葉すら俺の魂には届かず
どこに行こうにも闇を背負わなくてはならない。
裏切られたことなんて、大したことじゃない。
この恐怖に比べれば。
孤独に苛まれ、軋んでいるこの社会は
例えるならば一つの車輪のようなもので、
ただ止まることなく回る、一つの車輪のようなもので、
いくら回ろうとも、隣り合ったスポーク同士は
出会うことは叶わないのだろう。
やがて崩壊する時が来たとしても……
それでも全てを偽ることは出来ぬ俺は
本心をさらけ出し、泥まみれになっても生きるしかない。
死んでしまっても、恐怖は消えないのを
本能的に理解してしまっているから。
やがて朽ち果て、大地に戻る時
俺はその哀しみにも似た感情の全てを
どこに捨てられるのだろうか?
炎の赤い舌でベロリと舐められ
煙となって天に昇れるのだろうか?
どうせ昇るのなら、朝日のように煌煌と輝きながら
辿りつきたい。
先達の待っているところへ。
でも、そこへ行き着いたとしても
孤独は拭えずに、俺は手造りのシェルターに逃げ込むのだろう。
なぜ、生まれて来なければならなかったのだろうか?
夜空に投げかけても、答えは無く、
ただ、悪戯に時間ばかりが過ぎて行く。
こんな苦痛を抱きながらも行き続けている
自分以外の人間に尊敬の意を隠し得ない。
あらゆるものが偽られたこの世界で
それを当然のものとして生きる人々に。
この歪んだ真理を破壊するには
俺一人の力では及ばず、
協力してくれる酔狂な人はいなく、
やはり孤独は拭えない。
どうしてもこのまま恐怖が消えぬならば
どんなことをしてでも、動けば良い。
夜を貫き、朝日を拝むまで。
草原を渡る風を追い越し、世界の全てに
この声を届けるまで。
命を失っても、永遠に。
そこまでしても、世界は変わることなく
今のまま歪んだままなのだろう。
どうせ俺は誰かに何かをしてやれるほど強くはなく、
何かを「してやる」と言えるほどにも強くはないのだから。
思った通りに生きることが叶わぬ望みならば、
いっそ適当に生きてしまえば良いのかもしれない。
でも、適当という責任感の無い響きが嫌いだから、
俺は道を模索し続けるしかないのだろう。
俺だけではない。
この恐怖を少しでも感じたことのあるものは
誰でもそうして生きているのだろう。
ただ、俺のように弱いまま足掻いている者は
俺の他にはいないことを祈る。
誰か、誰でも構わないから
世界の中心で声を張り上げてくれるほどの
意志の強さを持ってくれれば
世界は絶対に変わる。
孤独を感じさせなほどの
正しい、世界を創造出来る。
恐怖は俺が全部持って行こう。
どうせ俺は人間社会に紛れ込んだ獣だ。
いずれ殺されるだけの、害獣だ。
気に病むことは何一つない。
俺を、殺してくれ。
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