夏の終わりに聴こえる歌は
秋に始まる風の声
途切れることなく続く日々に
僕らは涙する暇もない
ただ、明日からは
もうちょっとだけ頑張ってみようと思った。
それだけのこと。

腐った日々を焼き払うため
傷つくことを覚悟して
僕は自分に刃をつきたてる。

渇いた自分に波紋を起す
たった一片の花びらが
こんなにも 今は
紅く見える
青い空の下 白い夜の中で
掌に落ちる 紅い花びら

どれだけ努力したとしても
どれだけ声を張り上げたとしても
この想いが届かないというのなら
この世界に意味なんて無い。

別に全てを認めてくれとは言わないし
分かった顔をして頷いてくれとも言わない。
ただ一言、その一言さえ僕に言ってくれれば
僕は死んでしまっても構いはしない。

大空を舞う鳥の群れ。
そこからはぐれた一羽の鴉。
傷付き疲れた漆黒の翼は
青い月光を浴びて、何よりも輝く。
強く、そして
美しく。

偽りの物語の中に紛れた
偽ることの叶わぬ願い。
声。
それと、祈り。
届けば良いとは思っても
届かないはずはないとは思えない。

だからまだ、価値が無い。


夢が見たいと思わないか?
ほんの一時だけでも
優しい 傷付くことない 暖かな
夢が見たいと思わないか?

雨が降っていた。
細くて冷たい、雨が降っていた。
夏の雨じゃなかった。
これはもう、秋の雨。
今年の秋はきっと、今までで一番
切ない秋になると思う。

消えない記憶を消したいのか
消えない記憶に消されてしまいたいのか
消えない記憶こそ自分そのものなのか
消えない記憶なんて、どこにも無いのか

僕はここに立っているよ
キミとの約束なんて無いけれど
僕はここで待っているよ
キミが来ないことも知っているけれど
僕がここで笑っていれば
キミはきっと心配事が一つ減るから
僕はここで唄っているよ
キミに聴かせたい歌を

何でこんなにも切ないのだろうか?
濁った夜のせいだろうか?
物悲しく鳴く虫達のせいだろうか?
それとも
別離の記憶を呼び覚ましてしまったからなのだろうか?

大切な人がいた。
大切にしたい人がいた。
出来ることなら僕がいつでも側にいて
雨の日は傘を差し 風の日は風上に立ち
転べば手を差し伸べ 涙すればキスをして
そうやって、大切に守りたい人がいた。

心の全てを預け合う関係。それはとても心地良くて
僕は、自分の中にこれほどの勇気があったのかと
いつも驚いていた。
たくさんの言葉を綴った。たくさんの気持ちを示した。
声を届けたかった。大好きな歌も。
でも、そんな日々は不意に途切れてしまった。
予兆はあった。ただ、それに気付かない振りをしていただけ。
全ては過ぎ去って、遠い昔のこと。
記憶の隅に引っかかった、哀しき残滓。
今、僕は一人で夜空を見上げる。
星も月も見えない、灰色の夜空を。
聴こえないんだ。あの日聴こえていた歌が。
あの日届けられた、祈りが。
どうせ降るなら冷たい雨じゃあなくて
あの人の気持ちでも降ってくれればいいのに。
僕はそれを残らず拾い集め、ポケットにしまう。
そしていつも、ポケットの中の気持ちを想いながら
残り少ない勇気を振り絞るんだ。
でも
全ては途切れてしまった。

途切れてしまった糸を手繰り寄せても
何の手ごたえも無い。
何も、無い。


何も出来ないまま このまま 僕の手は錆び付いてゆくよ
堪えられない痛みを全て 全て 涙に変えて落として歩く
いつか いつか 僕の掌に 何かが舞い降りるなら
それは あの日貴女が望んだ
一片の羽が良いね

何も出来ないまま 何も見えないまま
何も聴こえないまま 何も唄えないまま
何も出来ないまま このまま 僕は 僕の手は砂に飲まれてしまうよ

あの頃に聴いた歌を聴いて、唄って、叫んで、涙しても
あの頃の君はもう、戻らないから。


こんな自分は見せられない
こんな情けない自分は見せられない
こんな情けない自分は、あの人には見せられない
ただそれだけが 僕の勇気

人を好きになることの怖さを
人を大好きになることの恐ろしさを
誰も気に留めていない世界なんて
とても綺麗で残酷だと思った。
でも、人を好きになることを恐れてる俺は
残酷な上に穢れているような気がして
寄せられる好意を正面から見ることすら出来なくなっている自分に
今までで一番の自己嫌悪を覚えた。
好意を寄せてくれる相手の欠点を探して楽しんでいる自分に
今までで一番の殺意を覚えた。
人を好きになることなんて
何も出来なくなることの次に恐ろしい

『眠くなるような声を持った女がいた
 彼女はいつも話の最中で眠った。
 多分、自分の声で眠くなっていたのだろう。
 彼女のあだ名は”レンドルミン”だった。』
そんなショートを考えてみたけれど
何が楽しいのか分からないので止めてみた。
花はそこにあって、それを見てどう思うのかは自由だけれど
せっかく花を咲かせることが出来るなら、やっぱり
皆に好かれるような花を咲かせてみたいと思った。

夢の欠片を拾い集めて
雨降る空に投げ捨てる
空っぽになった自分の中に
無限に広がる空白に
さあ、何を入れようか?

辛さを我慢出来るのが夢
辛さを糧に出来るのが現実

追いかけて逃げるのが夢
逃げようとして追いかけてくるのが現実

さび付くのが夢
現実はさびることなく回り続ける

広がるのが夢
広げたくないのが現実

好きな人といる夢
一人でいる現実

途切れることなく聞こえる音が
こんなにも僕を落ち着かせてくれる
途切れることなく降り続く雨に
ずっと身をさらしていたい気持ちになる
自分のリズムと 雨のリズム
つま先と 指先が それぞれ好き勝手なリズムで踊る
雨粒は弾けて踊り 一瞬だけ輝く
億の粒の内の一つだけを 掌で受け止める
弾けて踊り 輝き消える前に
彼らは小さな声で僕にささやく
「明日はきっと、良い天気だよ」

誰に見られることも無く咲く花に
僕はいつも羨望の眼差しを向ける
誰かに見られるために咲く花に
僕はいつも同情の視線を向ける
花の咲く理由なんて
あろうがなかろうがどっちだっていいけれど
僕が花を咲かせることが出来るのかどうかということになると
それはまた別の問題だ

広い部屋の窓際に
セミダブルのベッドを置いて
夢の中でも一緒にいるような
そんな恋がしたい

空の青さに涙するほど打ちのめされていたなんて

いつまでこうして、この風の強い街で立ち尽くしていればいいのだろうか?
疑問は降り積もる雪の如く 音もなく僕を灰色に染めてゆく
いつかこの灰色の穢れた雪が溶けるときが来るとすれば
それは過ぎ去った青い春から届く風じゃあなくて きっと
真昼の光だけなのだろうと思う。
だから僕は、真っ直ぐ見詰めることも叶わないほど眩しくて透明な
緑の木々を輝かせ 風に彩りを加え 日々を優しく撫でてゆく
真昼が来るのを待っている。

手首を切るならまず先に
部屋を綺麗に掃除しておきたい。
綺麗になった部屋に必要なものを買ってきて
そうこうしている内に一日が終わる。
手首を切るならまず先に
体を綺麗にしておきたい。
すっきりシャワーを浴びてから
一番お気に入りの服を着て
誰に見せても恥ずかしくない自分になってからにしたい。
自分を着飾ると、外に出たくなる。
そうこうしている内に一日が終わる。
手首を切るならまず先に……

待つことと、信じることと、夢見ること。
その三つだけが今の僕を支えている。
つーか両手で持てるのはそれだけで精一杯だしな。
それだけですら身に余る気がしないでもないけれども。

俺の中の下らない俺を焼き尽くすことが出来るのは
俺の中の隠された本心を引き出すことが出来た
俺の中の本当を唯一引き出すことが出来た
あの人しかいない。
だから俺は
あの瞬間の、途切れてしまったあの瞬間の
その次のシーンが見たいから
待つことに決めたんだ。

人が死ぬ、一歩手前の瞬間。
その感覚を一度味わったことがあります。
全てを諦めて、全てを受け入れるしかなくて
何もかもが砂に堕ちてゆくあの感覚を。
あの感覚にとりつかれているから
まだあの瞬間から抜け出せていないから
現実が、薄っぺらに見えてしまうのかもしれません。

鈍い頭痛が また 甦り
僕は涙を流して 流れ過ぎ行く時に耐える
鼓動と共に押し寄せる痛みは
現実を生きる 唯一の証
止め処なく 止め処なく 涙は零れ落ちる
まるで 夕闇に涙する思春期のように
何も知らずに恋を唄った あの頃のように
止め処なく 止め処なく
涙は雫となって 溢れ零れる

だからここから始めよう
消えない頭痛を呪うより
変わらない今を恨むより
進めない自分を嫌うより
見えない未来を祈るより
僕はまだ出来ることがある。
だから また
だからここから始めよう
この夜から また 始めよう

星が綺麗で空気が美味い!
これ以上何を望むんだ俺は!


朝起きて夢の続きを夢見るような
終わることない夢を夢見るような
本当に素晴らしい世界を想う
素敵な感覚。
僕らには、それがある。
誰にだって、ちゃんと備わっている。

それは辛い、泥まみれの毎日を
少しでも楽しくするための
ちょっとした贈り物。
大切に使おう。
時間を。そして
あの時思い描いた物語を。

そのためだけにここは存在する。

そのためだけに僕のような人種が存在している。


空の青さに涙するほど 感傷家ではなけれど
空の青さに痺れないほど 現実家でもない。
空の青さに引き込まれるほど 自分を見失っていないし
空の青さを忘れるほどには 記憶も崩れ果ててはいない。
でも
今日の僕は
空の青さが痛いくらいに 優しく 厳しく そして
哀しく 見えた。
そう、痛いくらいに青い空だった。

年を取るにつれて、たくさんのものを失ってゆく気がする。
誰もがそう思うはずだし、得ようと思えば多少なりとも得るものはあるはず。
それは一般論の世界だけで言ってくれ。
たくさんのものを失ってゆく気がする。
仕事に対する熱意とか、恋愛欲とか、物欲とか
大切にしていた指輪だとか、丁寧に削った鉛筆の入った筆箱だとか。
そんなものを失ってゆく気がする。
そして、それは恐ろしいことに本当だったりする。
失ってしまったものを列挙することに意味はないし
そんなことをすればただ死にたくなるだけなのは分かっている。
でも
俺がやって来れたことなんて、ほんの些細なモンだ。
まともに話だって書けちゃいねぇしな。

今だけは時間の流れから切り離されたここで
静かに眠っていたい。
夢さえも見ないで……

トリガーがあったんだ。昔は。
昔はそのトリガーは簡単に引けたんだ。
今じゃどんなに力を入れても、油を差しても
その引き金は動きゃあしねぇのさ。

自分に酔ってる訳じゃない
ただ、現実味が無いだけだ。
あの日から、ずっと。四年間も……
現実に、生きていないだけなんだ。

夜空を見上げてみた。
何となく見上げてみた。
雲の切れ間に、輝く星。
とても綺麗だった。
胸一杯に夜の空気を吸い込んでみた。
夜の、濃い空気。
明日のために休んでいる、空気。
なんだ
煙草なんていらないじゃないか。

窓の外を見ていた。
僕らの住む街は、この季節とても強い風が吹く。
秋の空は高くて、哀しいくらい水色。
そこに浮かんだ雲は早足に窓を左から右へと流れて行く。
時折飛び交う鳥も、風の強さに参っているように見える。
電線が小刻みに震えている。木々の枝葉も。
紅葉まではまだ少し間がある。
橋の上は今日も渋滞。家路を急ぐのか、それとも外出するところなのか。
窓の外を見ている。
秋の空を見ている。
煙草の煙が満ちた部屋、
薄暗い人工の光の満ちた部屋で 僕は
また この季節 一人きりで
窓の外を見ている。

夜空が口を開けて笑っているような
半分だけの月
山裾に隠れても
その姿は僕の目に焼きついている

幸せになれないかもしれないけれど
それでも背を向けられないのは
そこにしか僕のシアワセが無いから

ないものねだりをしてしまうのは
今の自分が嫌いだから
満たされた気持ちに浸るのは
それより先が見えていないから
どこにいても 何をしていても
僕らは救われずにいる
だから
受け入れよう。降りかかる億の雨粒を。
赦そう。兆の傷を。
そして
こんな出来損ないの世界を憐れんでやろうじゃないか。
きっと、それがヤサシサの価値

自分らしくない自分らしさを
ここではない何処かに探し出そうとしても
ただ、哀しみが増すだけ
だから僕らはこう言おう
「好きだから」と言ってしまおう
多分、それが一番正解に近い

世界は闇に満ちていて
腐肉と小水の匂いしかしないけれど
見上げた空に月が浮かんでいるなら
他の全てを赦すことだって出来てしまうかもしれない。

夢見るために生きていたかった
夢を見て暮らしたかった
気付いてしまったのは
夢にすがり付いて 逃げ込んでいた自分
破れることない夢を見て
傷を誤魔化して生きることを選んだ自分
情けないにもほどがある

だからまた、俺は俺を取り戻す


その声を聴かせてくれ
僕に無限の力を感じさせてくれた
僕に無敵の未来を感じさせてくれた
その声を聴かせてくれ
ここは今、とても風が強いから
微かな声じゃあ聴こえない
だから
とても強くて、大切な
その声を僕に届けてくれ

下らないこの世界から
下らないこの僕が
いつの日か消え去ってしまうまで
下らない毎日を
ほんの少しずつ
磨き上げて行く

僕らの世界にはたくさんの歌が溢れている
純粋な愛を唄った歌
青い春の想いを唄った歌
命を削った祈りの込められた歌
たくさんの歌が溢れている
僕はいつもそんな素敵なたくさんの歌に
助けられてここまでやってきた
でも
どんな素晴らしい歌を聴いても
今は気持ちが震えない
夜空を見上げて涙も出ない
だから
もう一度、声が枯れるまで
僕は唄うんだ
この夜に。この場所で。

窓から見える空の下
この空の続きに
青くない空があって
そのずっと向こうにまた
果てしなく青い空があって
その真下にキミがいるなら
本当の青の中でキミが笑っているなら
僕もへこたれてはいられないから。
キミが笑うことも出来ずにいるなら
僕はここから声を贈り続けるから。
届かない歌をいつまでも唄い続けるから。
窓から見える空の下
深紫の山並みと 薄い白さの雲の狭間で
僕はこうして風を見る

日々は流れ過ぎ去り、やがて雨も上がる。
虹はその姿を見せなくても、陽光は草原を照らす。
風は優しく吹かなくても、花は咲き乱れる。
誰に分かるだろう?
何が幸せなのかなんて。
誰が答えられるだろう?
何が正しいのかなんて。

死ぬなんて簡単な台詞
いつから使うようになったんだろうか?
死にたいなんて安易な台詞
どこで覚えたんだろうか?
どうせだったら
ちゃんと生きたい ってくらい
気の効いた台詞吐いてみせろ俺

だからまだ僕はここから抜け出せずにいるんだ
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