独白と、夜想

小さい頃の私は、とても弱くて、泣き虫だった。
だから強い貴方に憧れた。
強い貴方の、背中に憧れた。
今、私は一人歩きが出来るくらいには強くなった。
貴方の弱い部分が見えるくらいには、強くなった。
貴方を守りたいと思うのは、当たり前のことでしょう?

貴方の背中ばっかり見て歩いていた私。
でも、本当は貴方の顔を見ていたかった。
貴方の、とても綺麗な横顔を見続けていたかった。
貴方は待ってはくれない。
だから私は貴方を追い続けるだけ。

貴方の寝顔を見て、私は一人微笑む。
窓の外はだんだんと白くなり、朝がそこまで来ていることを教えてくれる。
貴方が起きたとき、まず初めに何を言うだろうか?
そんなことを考えて、貴方の寝顔を見ている。
朝の目覚めは、紅茶をいれようと思う。
貴方は嫌がるかもしれないけど、私はコーヒーよりも紅茶の方が好きだから。

貴方を驚かせたい。そのためだけに、私はこうして成長してきた。
だから、泣かないで。
もっと私を見て。

花が咲く理由 理由なんてないという理由

どんな日々が訪れたとしても 変わらないもの こと
たった一人でも 変わることの無い人がいること
幸せではないとしても

意味について語り合うことの無意味さ
意味は意味でしかない その向こうには求めるものはない

私の言葉は風さらわれてしまうだろう
でも、きっと聞いてくれる人がいる

どんなにボロボロになっても立ち上がってしまう自分
そんなときは、笑うしかないじゃないか

風も太陽も水も命も 全てはそこにあるだけのもの
意味を与えるのは自分でしかない

全ては自分のために存在する
そこにだけ意味があり、理由がある
世界の意味は、自分の意味と等価

咲かない花が咲くときを待って、水を撒く

決意は破れるから
約束は守れないから
僕は君のために何もしない
ここから祈ることもない
君の隣にいて 僕は
ただ、君をみつめていよう
誰にも真似できない、僕だけの愛の方法

いつまでも子供でいられるのは
大人にならずにいられるのは
夢と 君のおかげ
どこにいても 何をしていても
おかげで純粋なままで生きていられる
信じているのは、たった一つ
僕と君の絆 存在 言葉
繋いだ手から伝わる温もり
優しく響く声 鼓動

情けなかった頃の自分と
今の自分と 
どう変わったのかは
貴方が一番知っているはず
私ではなく 貴方だけが

私の強さは貴方の強さ
貴方の弱さは私の強さ

貴方の吐いたため息の数だけ
私は貴方の誇りになりたいと思う
そして、願う
貴方のため息が全て
黄金に変わることを

私は迷ったまま
貴方と一緒に生きたい
それが私の自由じゃないだろうか?

手にした全ての価値を合わせてみても
私の姿が見えないから
貴方の中にいる私の価値を
私自身の価値にしたい

貴方を助けるために
貴方を超えたい

この両手は、いつのまに貴方を抱きしめられるほどに
成長していたのだろう?

涙が出るほどに 嬉しい

貴方と重ねた日々が、私の価値
後悔する必要のないほどの
充実している毎日
価値なんていらない
本当に必要なのは、もう手に入れているから

驚いて、そして、笑って。

私は弱くない。情けなくない。負けない。
それは、貴方が教えてくれたこと。
貴方に報いるための、唯一の方法。

新しい夜と、新しい朝。
毎日はただの繰り返しだとしても
朝の空気だけは毎日違う。
夜の匂いだけはいつもしびれる。
月は満ち欠けを繰り返し、
私はそれに一喜一憂する。

夏の終わりはいつも名残惜しい。
でも、足早に過ぎてしまう。

やけどした肌に染み入る、秋の風。
虫の音を聴いて思う。
次の夏は、もっと楽しもうと。

夢から覚めたような、残酷な感じ。
でも、夢はまた見ることが出来る。
きっと、昨日よりもずっと良い夢を

同じ月は昇らない。
いつも、月は新しい
一瞬ごとに生まれ変わる、新しい、同じ月の下
私は貴方が気付いてくれることをずっと待っているでしょう
ここでこうして、
白いシーツとハーブの香りの薫る部屋の中で
紅茶とコーヒーと、クッキーを用意して
貴方の帰りを待っている。
そして、私はこう言いたい
「おかえりなさい」
それだけが、私の望み。
他には何も手に入らなくても構わないと
素直にそう言える

歩いても歩いても追いつくことの出来ない
彼の背中
大きくて 広いのに
どこか寂しそうに見える
それは気まぐれな針の雨が間に降っているからではない
雨は私達を引き離したりはしない
そう思いたい。
彼の背中は寂しそうに見える。
それは、最後の時が訪れることを知っているからだろうか?
だとしたら、私の背中はもっとずっと寂しそうなのだろうか?

見なれて、見飽きない彼の背中
本当に見たいのは、彼の笑顔。
それはきっと、彼も知っている
でも笑えないから
背中を見せる。
その姿が寂しそうに見えていることを
彼は知らないのかもしれない。

あと少しで追いつくのに
追いかけても届かない
その背中

月は逃げる
掌から水はすべり落ちる
栄光や 夢や 現実や 希望
全ては追いかけても逃げてゆく
諦めた、その一歩先で待っているとでも言うかのように
嘲笑うように逃げる

どこまでも中途半端な私は
それでも夢を見るようにして
毎日を送っている
そうすることが
唯一許された自由だとでも言うかのようにして

痛みなんて言葉は、私の中にしか許せない
そう思うのは、きっと私が弱いから
必要な薬は、君。
でも、今は一人

この世界を愛せなくなった日。
君がいなくなった日。
眠れない夜の中、寝返りを繰り返しながら
枕に顔を押し付けて、
想うのは、君のことだけ。

許されないのは知っている。
でも、許されないままでは生きられない。
何が正しいのかは知らないけど、
そこまで気丈にはなれなかった。
君がいても、いなくても……

虫の良い言い草を繰り返して
夢の中で生きているようなもの
眠れない夜の中で見る夢は
とても寂しくて 哀しい
孤独な夢
私はそこから抜け出せずにいる

子供の頃に味わっていた
絶対の安心感をもたらしてくれる
鼓動
まるで羊水の中に戻ったかのような
離したくないような 鼓動
それは今の日々と同じで
俺はこの羊水まみれの毎日から
抜け出せずにいる
外の世界に生まれ出るとき、俺はまた
命の限りに泣き叫ぶことになるだろう
眠っている子供を起こさないでくれ。
このまま、鼓動の中で夢を見させてくれ
外の世界に出るには、まだ早かったんだ。

自分で自分が操れない。
そんな子供のような泣き声が
俺の内側から涌き出てくる。
自分の殻からはみ出た叫びは
外の世界に触れて 姿を変える。
容易く人を傷つけることの出来る刃へと。
それは、俺の泣き叫ぶ声なのだと
誰かが気付いてくれることを
ずっと願いつづけていたというのに。
泣き叫ぶ子供のような、俺。

どんな言葉や服で自分を飾ったとしても
結局僕らは裸で街を歩いているようなものなんだ。
自分自身を育てなくてはいけないし、
何も守る必要なんてない。
ましてや下らない外見なんて。
誰もがそれに気付いているのに
街を歩く人達はいつも
外見だけしか見ようとはしない。
そんなもの、ただの色と形だけなのに。
僕らの中身はもっと沢山のもので出来ている。
音や光や鼓動や温もり。それに
信念や思想や夢や希望や祈り。
外見なんかよりもずっと重要なものが
僕らの内面には隠れている。
それが人間の自然な姿なんだ。
僕は言う。
これが人間だって。
何故なんて、誰も訊きはしないだろう。
本当は、誰もがそれを知っているのだから。
僕らは何も持たずに生まれて来て、
何も持たずに死んでゆくのだから。

僕は旅を続ける
君を探し求めて
でも、どこまで行けば君に会えるのかは知らないし
君に会えるという確証を持っているわけでもない
ただ、僕は君を探して旅を続ける
教えて欲しいのは、
君に会える道
君が好きで、本当に好きで、
どうしようもなくて旅に出た。
バカみたいに衝動だけで生きてる僕だけど
きっとももうすぐ君に会える。
単純だと自分でも思うよ。
でも、あんまり難しいことは必要じゃないだろう?
僕は君を探して旅をするし、
君は僕を待っていれば良い。
このとても素晴らしい世界の中で。

君の残していったものを
僕は大事にしている
手に取るたびに、君への思いが溢れて
微笑みが浮かぶ
君が僕の隣から離れてしまったことなんて
忘れ去ってしまうかのように。
流れた時間と同じだけの距離。
僕はそれを把握出来ないままに
風を浴びている。
明日も、この風はきっと吹いてくれるだろう。

思い出すのは、最後の日の出来事。
言葉もなく、合図もなく、
僕らは他人になってしまった。
後悔? したことはない。
君が選んだことでもあり、
僕が選んだことでもあったのだから。
ただ、何も思わずに日々を過ごせるほどには、
僕は強くなかった。

君と過ごした日々の重さは
僕の毎日の中に。
どこに行っても付き纏う
君の面影と、笑顔。
そして、声。
哀しくなかったのは、僕の中にまだ
君がはっきりと残っているから。

あの夏の日々を君は思い出してくれているだろうか?
僕以外の誰かと、次の幸せを探しているだろうか?
それとも……
でも、僕はもう変わってしまった。
君の面影ははっきりと残っているけど、
それは過ぎ去った時間と離れた距離を差し引いた
偽りの君。
僕は君に会いたいとは思わないで毎日を過ごす。
君の面影が思い出せなくなったとき、
僕は本当の意味で幸せになっていると思う。
そう、思いたい。


inserted by FC2 system inserted by FC2 system