『キミの行く道』

音まで聴こえそうなほど月の光が鮮やかな夜
キミは迷うことなく言った
「道を行くのよ」
力強いその言葉に、僕も迷いを捨てた

いつしかキミは僕にとって最良の友達になった
真っ直ぐな目をしているキミ
僕の迷いを全て見抜いて、そして消し去る
眠れない夜にはキミのことを考えるようになった
それはいつしか当たり前のように、恋に変わった

キミは僕の友達。それはずっと変わらない
僕を見るキミの目は、出来の悪い弟を見る目
離れる日が来てもキミは変わらない
「道を行くのよ。真っ直ぐにね」
僕の中の迷いを消すように、力強くそう言った
僕の中の迷いは、以前とは違う種類のもの
キミは気付かず行ってしまった

気がつけば日差しは暖かくなり、少し風も強くなっていた
いなくなったキミ
僕はまた眠れない夜を過ごす
ある日キミからの電話。君は言った
「辿り着いたわ」
僕は「おめでとう」と言ったけれど、その瞬間自分が嫌いになったんだ
言えなかった「好き」の言葉
迷いも悩みも、もう過ぎたこと
今はただ瞼を閉じて、月の調べを聴いている
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