『流れる涙』


許されることなら
それが許されることならば
僕は君の細く柔らかな肩を抱き寄せ
永遠を唄い続けただろう

それが許されることならば
僕は君の隣に立ち
君に降りかかる苦難の全てを請け負っただろう

それが許されることならば
愛だけを唄い 君を抱きしめていただろう

掌からこぼれてしまった僕の望みは
億の雨となってここに降り注ぐ
僕ら二人が出会った場所に
雨が降るべきだと そう思う
君はここにいることが許されず
僕は君を引き止めることすら出来なかったのだから

君の全てを記憶に刻んでおきたかった
こうなってしまうことが初めから分かっていたのなら
君は知っていたはずだ
君を失った僕がどうなってしまうのか
だから僕は哀しい
君が僕に望んだことは たったそれだけだったのだから
哀しんでくれる人が たった一人だけでも欲しいと
君はそう 切実に望んでいたのだから

僕は哀しむ
でも それだけじゃない
僕は君を恨む
壊れてしまった僕の感情は矛先すら定まらず
ただ 同じ場所を巡り続ける
僕はここを去ろう そうしよう
そして またここに戻ろう
そうしよう

君のことを忘れることは出来ないし
君なしで生き続けることが出来るとも思えない
でも 君はどこにもいない
だからここを去ろう
そしてここに戻ろう
やがて 今よりもずっとずっと先に……
本当に心から君に感謝出来る日が来るだろうから
僕の唄い続ける歌が 君に届く日がくるだろうから

でも せめて今だけは……
ここでこうして 涙を流していたい
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