『初めの想い』


僕はとても贅沢者
欲しい物がたくさんあるのさ
金銀財宝なんかじゃなくて
もっとカタチのはっきりしないもの
両手一杯に抱き締めれば
心の奥が熱くなりそうなもの

僕はとても臆病者
失うことにいつも怯えてる
握り締めた掌の中身を
根こそぎ奪ってしまうような
たった一度の失敗が怖い

思い描いた自分と今を
比べることに意味はないけど
今の自分が羽ばたけるなら
自分をいじめてみるのも良いんじゃない?

空っぽの箱幾つ集めても
無駄に場所を使ってしまうだけ
きちっと整理されて ぎゅっと凝縮された
そんなキレイな箱が少しだけ欲しい

認められないことがイヤなんじゃなくて
見付からないことがイヤなんじゃなくて
言い訳ばっかり探している自分と
本気を絞り出せない自分がイヤなだけ

頭の右側でくるくる指を回せば
自然と首も回り始める
唇からは歌が流れて
つま先がコツコツ音を立てる

ずっと忘れていた色とカタチを
ふいに思い出したとき
笑顔は途切れることなく
足取りはとても軽くなる

デタラメな歌を歌って
思い付きだけのステップ踏んで
くるりと一回転してみれば
世界はごちゃまぜになってゆく

背中に翼が生えたような そんな気持ち
一度は味わったこと、あるでしょう?
追い求めても良いと思う
ただそれだけの気持ちを

適当に道を選んで進んで
迷ってしまったとしても
戻るよりは進む方が早いと
そう笑える気軽さが欲しい

涙が溢れるような切なさも
心沸き立つような楽しさも
同時に求めてしまう
僕は贅沢者

響き合い 導かれ
沸き上がる祈りは
辿り付く場所さえ見えなくても
止まることなく流れ続ける。

濡らした頬が乾くまで
立ち尽くしていた日々に
僕は声を枯らして
歌を探したけど
見付かったものは一つだけ
「君がいない」
その現実だけを僕は
手に入れることが出来た。
夢に涙するくらいに。

今のこの時を大切にしよう。
そう誓ったのも忘れて
忙しい毎日に埋もれて行く
夢と祈り。
全てが塵になってしまえば
諦めることも出来るだろうに……
僕の掌はまだ
動き出す刻を待ち続けている。

いつだって俺は教えられてばかりだ。
俺も気付くことのない、俺の望み。
それをアイツは気付かせてくれる。
どんなに辛い時でも、辛い時だからこそ、
本当のことを思い出させてくれる。
涙が溢れるような気持ちを
また、与えてくれる。

過去の記憶が現在を苛む。
そんなことに怯えている内は
未来を信じることなんて出来ない。
過去に怯え未来を望むのなら
それはただの現実逃避だ。

手遅れなのを知ってはいても
どうしようもなく駆け出したくなる時がある。
その衝動を抑えることに、どれほどの意味があるだろう?
どうせ手遅れなのだから、
駆け出してしまえばいい。
泣くのはそれからでも遅くはないのだから。

ここに居続けようとする気持ちと
背中を押す時の流れに
乱される、初めての想い。

inserted by FC2 system