破片


ヤサシイ記憶に触れるように
布団の中から手を伸ばす
薄暗闇に突き上げる
ヤサシク体をなぞるよう
見えない指を滑らせる
時計の針が刻む音
過ぎ行く時を撫でる音
心の鼓動と重なって
指先すらも闇に溶け
ヤサシイ記憶に伸ばせども
この掌は砂に堕つ

過ぎてしまった日々に
残してしまった途切れた言葉
忘れられるなら
忘れられないから
夕暮れ空を見て嘆く
孤独な自分の姿なら
心を刻めば忘らるる
孤独な貴女の涙なら
幸せ願えば忘らるる
夕闇迫り 押し迫り
ただ嘆くのは
途切れた言葉

今日のこの日に感謝して
枕に顔を埋めても
果たせなかった誓いだけ
明日になってもただ残る
見えない糸が手を縛り
解こうとすれば肌は切れ
流れる赤い血の雫
夢の中にのみただ残る
今日の感謝を忘れずに
明日に願うは唯一つ
流れた落ちた血の痕を
拭うその日よ 訪れて

崩れた四肢に想い入れ
凍った指を踊らせる
割れた背中に願い乗せ
腐った足で歩み出す
流れる風に髪委ね
胸一杯に吸い込んで
砕けたこの身
拾い上げる
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