瞳の一番奥に刻まれた 沁み込んだ
何よりシンプルな色が
体を巡る血のように
脈打って 流れて

溢れ出る気持ちを留めて
ここに押しやって
耐えて 堪えて
楽しくて笑ったことなんて
一度もなかったあの頃

灰色の街並みに馴染めなくて
それでも溶け込んで
埃臭い風を浴びて
空を見上げた

ただ怖かったのは 失うこと
瞳に焼きついた
緑を

自分の中を覗いて見ても
色なんてなくて
色があることに気付かなくて
目を閉じて
蓋をして
目を逸らして
毎日の中で感じる全部を
アタリマエだと納得して

瞳に映る景色から
あらゆる色を消し去って

同じ夜の中で 出会った
同じ闇の中で もがく人たち

灰色だった街並みも
灰色のまま 色付いて

知らずに笑い出す自分なんて
初めて知った日

自分のことを話すなんて簡単なことを
したことなかった
新鮮な気持ち 濃密な時間
大袈裟じゃなく 今日が誕生日なんだと
強く思った日

同じ時間を過ごす中で
緑はより鮮やかに

広がってゆく どこまでも
この気持ちは 全ての人に
吸い込んだ空気の分だけ
瞳は鮮やかに

いつかまた一人になって
出し尽くして 空っぽになっても
怖くなんてない
瞼を閉じれば そこに映る
永遠の 緑

何も出来ないことが怖かったけれど
死ぬことよりずっと怖かったけれど
今はもう
何もないことなんて
ないから

教えてくれた人たちに
与えてもらった気持ちに
見せたい色があるから

手を止めて
目を閉じて
この世界を想えば
見えるのは
たった一つの
力強い 緑
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